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Yomiuri Weeklyでブログに関するカンチガイ記事

 日本最大の新聞社である読売新聞。そのWeb版であるYOMIURI ONLINEのマネーニュースである@Money(アット・マネー)にて、「すでに100万サイト!大流行『ブログ』でストーカーに狙われる」と言うYomiuri Weeklyの特集記事がトップで扱われています。「@Money:マネーニュース」と言う経済・金融のカテゴリーなのに、トップ記事がストーカーについて? カテゴリーに関係ないと思われるが、どうやら雑誌「Yomiuri Weekly」の記事の一部がこのカテゴリー内に。なぜ独自のカテゴリーを作らなかったのでしょうか。まぁ、この部分はどうでも良いですが。

大流行の兆しを見せている「ブログ」。国内の開設数はすでに100万サイトに上り、本場の米国では、マスメディアと並ぶ「第五の権力」と呼ばれるほど影響力を増している。「日記感覚の手軽さ」が人気の秘密。だが、そこに意外な落とし穴が待ち構えている。さらに、非道な個人攻撃の温床となる危険性さえはらんでいるという。
 という過激な書き始めですが、ねこたま的には「ブログ」「『日記感覚』で被害」「ブログの『2ちゃんねる化』」など、昨今話題となり目を引く言葉を使った「アナタに忍び寄る犯罪」的な内容でありながら、肝心なブログの部分で多くの誤解があります。内容的には「個人情報をブログで公開してストーカーに遭う」「ブログで嫌な目に遭う事がある」と言うことですが、焦点は「ネットの匿名性と無秩序性による犯罪」ではなく、被害者のことを考えるなら「個人情報の発信など安易なネット利用による功罪」と、「正しい知識の必要性」の部分ではないでしょうか。小倉秀夫弁護士のトラブルの件は、「ブログの趣旨に合ったコメントのみがされる」という氏の理想と現実の部分であり、意図しない氏への人格を非難するコメントが「言論の自由への妨害」ともとれる文章があり、正直世の中甘く見すぎでは…と思うのはねこたまだけ? 登録者のみがコメントできたり、管理者がコメントを見て判断してから公開する、と言うシステムを導入することを考えたことは無いのでしょうか? また、
「実際、コメントスクラムで閉鎖に追い込まれたブログは多い」と小倉弁護士は言う。
とありますが、コメントは管理者が簡単に受付不可にしたり削除できます。閉鎖した理由は「嫌な思いしたからや~めた」ということであり、ブログのコメント機能自体の問題ではありません。
 2ちゃんねるに関連する事件でよく取りざたされるのは、この記事でも言っている「ネットの匿名性と無秩序性」ですが、個人が裁判を起こすのが難しい日本に於いて、匿名でない状態で、対企業などに対する意見を述べること自体が難しく、匿名性は個人が身を守る方法である、という部分を見落としていないだろうか(企業からお金を貰ってそんな記事は書けないか…)。しかも、
これまで「2ちゃんねる」などで暗躍していた彼らが、ブログの流行で活動の場を広げる可能性は高い。
とは、そういう考えを持っている人がいることこそが恐ろしい。「2ちゃんねる=悪の集団の温床」ですかね…。
 とにかく、本題となる「ブログ」に関する知識の欠如と誤解がもの凄いです。冒頭から
言ってみれば、ホームページ(HP)の簡単版。 ~中略~ ブログは、このデザインの手間をなくしたものだ。
 ( ゚Д゚)<ポカーン え゛…「ホームページ(HP)の簡単版」というのは間違っているわけではないが、簡単なのはブラウザーで簡単に記事の投稿でき、カテゴリー別など体系的な構成にすることが簡単に出来るCMS(コンテンツマネジメントシステム)が良く出来ている…と言う部分です。デザインの部分はブログの売りではなく、ブログを提供しているサービス側が多様なデザインを売りにするために用意したもの。ブログのシステムである「MovableType」などのツール自体にはデザインを変更するシステムはありません。また、ブログの説明で特に酷いのは
「『誤報』を流してしまった場合の影響が非常に大きいのです。限られた人しか見ていないHPなら内輪の訂正で済むが、ブログは、どこまで自分の誤報が伝わるかわからない」(森氏)
と言う部分。「HP=限られた人しか見ていない」「ブログ=際限無い」の構図は全く根拠が無く、正直独りよがりな内容。しかも、トラックバックの意味が全く逆です(ちょっと森氏の内容とトラックバックの関連性は微妙かな?)。トラックバックとは、情報の出所がここであると参照した側が善意でお知らせしてくれるシステムであり、自分のサイトの情報がどう扱われているか知ることが出来、しようと思えば誤報を訂正するよう要請する足掛かりとなるシステムでもあります。トラックバックを利用していない場合は、サイトで公開している内容が何処で参照・引用されているか分からず、また訂正してもその効果を知る手がかりが掴めません。残念ながらトラックバックをする側からの自動でリンクする機能が無いので、参照・引用する側は意図的に善意で参照・引用元のリンク等を挿入しなければなりませんが、情報元(ソース)を確立するシステムであるトラックバックは素晴らしいものだと思います。
 今回のような、特集やコラムなど個人記者が書いたであろう記事に関して、読売新聞自体でも明らかな情報・常識不足が以前から気にはなっていました。特に情報処理や経済分野でのこのような事が他紙に比べ多い気がするのですが、その分野での監修担当と言うのはいないのでしょうか。

2005/04/05 23:17